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モノ言う株主は企業価値を向上させるか 

このコラムで再三触れていることですが、投資ファンドとは、投資家から利回りを約束して資金を集めてファンドを作り、この集まった資金で企業買収を行い、資産の売却、余剰資金の吸い上げ、従業員のリストラ、設備投資の縮小などを通じて、2-3年間でキャッシュフローを増大した後、この企業を転売して売買差益を得、この売買差益を投資家へ還元する投資組合です。投資ファンドには様々な種類がありますが、“安く買って高く売り、売買差益をファンド出資者へ分配する”ことは共通しています。ファンドが言う“企業価値の最大化”とは、自分たちとその出資者の懐に入る金額の極大化と解釈しても良いでしょう。こうしたファンドの一種にアクティビストファンドと言われる(分類される)ものがあります。村上ファンドのような“モノ言う株主”と言われるものです。

 

ファンドの中には、日本の上場企業が長年蓄積した内部留保を狙い、市場で株を買い付けて株主になり、増配や会社解体、含み益のある資産処分などを通じ、ターゲットになった会社の富をファンドへ移転するものもあります。日本の上場企業が長年蓄積した内部留保は、この富の移転(日本の上場企業からファンド経由でファンド出資者の懐へ入る)により、ファンド出資者が(企業が数十年かけて蓄積した内部留保を配当等の形で懐に入れることで)短期間で大きな儲けを得ることを可能にするのです。

 

ところで、なぜ投資ファンドの実態について触れた情報が少ないのでしょうか?一つの理由が、M&Aに関連している法律事務所(弁護士)、会計コンサル会社(公認会計士、税理士)、経営コンサルティング会社には、ファンドを上得意とするものが相当数あるからです。例えば、経営コンサルティング会社は、ファンドの企業買収に関する経営計画を作成する一方で、法律事務所や会計コンサル会社は、デュー・ディリジェンス(企業精査)で報酬を得ている実態があり(しかも、1件当たりの報酬は数千万から億円単位ときいています)、判り易く表現すれば、“ファンドはお得意様”ということになります。この様な利害関係が存在しているので、(彼らはファンドが何をしているのか十分に知っていますが、)商売を優先し、決して口を開きません。こういう実情を、なぜかマスコミは取り上げませんね。何かの利害関係が存在するのかもしれません。買収の対象になる企業経営者の間には、この様な実態が知られていないのが実情ですから、このコラムを通じ、情報の非対称を修正できればと思います。M&Aの当事者である企業の意思決定権者が、十分な知識に基づいて意思決定を行うことが重要です。

 

ファンドの企業買収は投機目的であるため、金融情勢次第で、ファンドへの投機資金供給量が増加したり減少したりして、活動に大きな影響を与えます。現状のような金融危機では、リスクマネーの供給量が減少しますので、ファンドが投機資金を集めることは難しくなります。つまり、ファンドが企業を対象とした投機をしたくても、資金調達が困難になる結果、企業買収が困難になります。資金調達が困難などころか、投資家がファンドを解約する状況も相次いでいます。このため、ファンドは手持ちの株式を売却して現金化する必要にも迫られており、これが、相次ぐ株式売却の背景でしょう。

 

こういった行動を取るファンドには“経営陣に緊張感を与え、経営を規律化する”機能があるという学者もおりますが、小職は、ファンドが企業に投機するのは、前述の富の移転のために行われるのであり、経営陣に緊張感を与えるためだけで株式の取得は行われないと思います。私見ですが“経営の監視機能”と言いましても、経営陣にプレッシャーをかけ、増配や会社解体、含み益のある資産処分などの要求を通しやすくするための手段のひとつだろうと思います。ただ、実際にモノ言う株主が入ってから非効率な企業が効率的になったという研究論文があることも紹介しておきます。

 

こういったファンドは、“安定株主が少なく、内部留保や保有する現金相当物を豊富に保有し、土地などの含み益を持った資産を豊富に所有する会社”の株式を取得します。これらのファンドが主張する様に、本当に経営にモノ申すことが目的で株式を取得するのならば、中には、経営危機にある企業の株式を取得し、経営陣にモノ申す事例があってもよいだろうと思いますが、なぜか、彼らが取得する企業は、“安定株主が少なく、内部留保や保有する現金相当物を豊富に保有し、土地などの含み益を持った資産を豊富に所有する会社”ばかりです。彼らは自分達の要求を通すためには、経営陣から恐れられる必要があります。経営者から恐れらくなったらオシマイです。このため、彼らは上記の条件に適合した企業のリストを作り、片っ端からターゲット企業の様々な部署へ電話をかけるそうです。そして、部署毎に回答内容がバラバラの会社、電話に出た社員が怯んだり恐怖を感じた会社の株式から買付始めるという話を聞いたことがあります。逆に、対応窓口が一本化しており、回答内容も金太郎飴みたいに整合性のある企業はリストのなかでも優先度が下がるらしいですね。また、一旦、株式を買い付けた後、ターゲット会社の社長に電話をかけ「俺様は大株主なのだから、今から説明に来い!お前は株主様を何だと思ってる」と社長を呼びつける者もいると聞いています。こういう実情も、マスコミは取り上げませんね。

 

一方で、事業会社は長期の視点で経営を考える必要があります。目先の利益を生むために、長期の成長に必要な研究開発費、設備投資、設備更新、従業員の待遇改善を犠牲にすることは、長い目で見れば、その会社の競争優位を損なうことになってしまいます。目先の株価だけ高ければよいと考えている人たちは、その会社に魅力が無くなれば、株を売って出て行けば済みます。しかし、抜け殻になり競争力が無くなった会社の従業員や取引先・仕入先はどうなるでしょうか?もちろん、機関投資家にすれば、自分が儲けなければ解雇されるので、投資先の会社の従業員のことなど気にしないでしょう。株主資本主義は、一見もっともらしく聞こえますが、実は目先の株価だけを考える経営は、長期的に見れば、企業の価値を損なうものではないでしょうか。

 

この記事にあります様に、モノ言う株主の発言力の低下は、企業統治機能を低下させ、経営の規律が緩む危険性を伴うという意見もありますが、投資ファンドが出資者から受けているミッションとは、投資家から利回りを約束して資金を集めてファンドを作り、この集まった資金で企業買収を行い、資産の売却、余剰資金の吸い上げ、従業員のリストラ、設備投資の縮小などを通じて、2-3年間でキャッシュフローを増大した後、この企業を転売して売買差益を得、この売買差益を投資家へ最大限還元することであり、経営の監視機能を形骸化させぬことを主目的として、株式を取得しているのではないと思います。

 

ファンド本来の目的は、会社の経営陣を規律付けではなく投資リターンの最大化である点を見落とさないことが、大切ですね。

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