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アメリカ企業に学ぶM&A失敗事例 

今朝(2010329日)の日本経済新聞で“経営の視点”をご覧になられた方も多いと思います。M&Aの件数が減少を続けていることは、M&Aバブルが弾けたに過ぎないことは、再三、このコラムでも触れてきました。

 

閑話休題。日本経済新聞が指摘する通り、M&Aの破談が続いています。日本経済新聞は、破談が続く原因について「むしろ最近は予定していた経営統合や企業買収を白紙に戻すなど、内にこもる傾向が鮮明だ。」と指摘していますが、そうでしょうか?私は、経営統合や企業買収の破談が、当事者の熟慮断行の結果であれば、非難するのではなく、“是”と捉えるべきだと考えます。個人的には、経営統合や企業買収の白紙撤回が続いたのは、日本企業が、M&Aの進め方に不慣れで、開示のタイミングを間違えていることに原因があるのではないかと思います。

 

例えば、キリン・サントリーの経営統合が白紙になったのは、両者が統合比率を決めない時点で、功名心に駆られた関係者がマスコミへリークして案件が表ざたになったらしく(伝聞ですので、確証はありません)、事実ならば、極めて初歩的な過ちを犯したからです。もしも、両者の経営統合交渉が、機密が守られ水面下で進んでいたならば、統合比率で合意に至らず、誰にも知れずに静かに終わっていました。そもそもM&A交渉とは、この様なものです。

 

H2Oと高島屋との経営統合白紙も、両者の経営トップが十分に話し合った結果、“企業文化の融合”も含め、統合後の企業経営が上手く行かないとして、企業価値の毀損を避けるため統合を見送ったとすれば、これは立派な経営判断です。M&Aの検討とは、M&A後に統合した会社の立ち姿の検討がどうなるかが、最も重要な視点であり、規模の追求は、検討するうえでの一要素に過ぎません。規模の追求を追う余り、“水と油”の企業体質のもの同士が一緒になっても、経営統合後に、ロケットスタートが切れるでしょうか。

 

これは日本特有の問題ではありません。アメリカにおいて同じような事例を取り上げた先行論文のひとつにSteven N. Kaplan先生による “A Criminal Exploration of Value Creation and Destructions in Acquisitions”があります。この論文は、Mergers and Productivity という本の中に収録されています(下記リンク参照)が、この論文に出てくるCooper Cameronの経営統合の失敗と分離売却の事例研究は、M&Aを数多く行った企業と言えども、経営統合後の検討を疎かにしたまま、経営統合を行い、人材の流失やモラル低下といった事態を生じ、企業価値を毀損する結果に終わり、結局、再度分離売却する結果になった事例を取り上げています。M&Aに携わる者ならば、この論文は、最低限読んでおくべきもののひとつです。アメリカの失敗事例に学ぶまでもなく、無理やり統合した結果、企業価値を損う結果に終れば、一体、何のために経営統合したのか全く意味を為しません。この様な無意味な企業結合で利得を得るのは、手数料が懐に入る投資銀行と、新聞・雑誌が売れるメディア位のものでしょう。

 

経営者はM&A後の立ち姿を十分に検討し、基本条件が合意し、M&A後の経営について確証が取れるまで、対外公表を控えることは、M&Aの“いろはのい”です。事業会社の事業統合は、喩えるなら、“企業同士の結婚”は容易だが“企業同士の離婚”するにはパワーが必要と言えるものです。M&Aは競争優位を確保するための手段に過ぎないことを肝に銘じ、M&Aの行為自体を目的化することは極めて危険だと指摘しておきます。

 

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