東日本大震災でM&Aは更に減少か
先ず最初に東日本大震災の被災者の皆様へ心からお見舞い申し上げます。
今回は、東日本大震災がM&Aに与える影響について触れようと思います。小職は、昨年の終わりにM&A専門誌「M&Aレビュー」で、2011年のM&A件数は2010年比で少し増加するのではないかと予想しました。しかし、今回の震災で2011年のM&A件数は2010年を下回るのではないかと意見を変えることにします。
今回の震災で毎日の様に、原発事故や津波被害による地震被害が報じられ、経済の先行きについて不透明感が増しています。全く異なる理由ですが、リーマンブラザースの破産直後に金融危機が報じられ、多くのM&A案件が一時中断や見送りになりましたが、今回も同様の現象が起きつつあります。今回の震災の影響は大型案件や東北・北関東に生産拠点や販売拠点をもつ企業のM&Aに顕著です。小職も同業者との会話の中で「いくつかの案件がストップした」という話を聞きました。
買い手である事業会社では、震災が及ぼす今後の事業への影響が読み切れなくなっており、大きな投資を伴うM&Aに踏み切りにくくなっています。リーマンショックの際は、売り手側はリーマンショック前の業績に基づいた売却金額を主張し、買い手側はリーマンショックの影響予想を織り込んだ金額を主張したため価格面での合意が取れず、水面下で見送りや交渉決裂が相次ぎました。このような場合に、双方代理(いわゆる仲介)のリスクが表面化します。売り手側と買い手側の両側から濡れ手に粟の手数料を手にする仲介業者に任せていれば、買い手側は過大な買収リスクを負うことになると思います。買い手側企業は双方代理(仲介行為)ではなく、買い手側だけにつくアドバイザーと契約し、買収対象会社の価値を正確に把握する必要があると思います。今回の震災でも同様の現象が起きるでしょう。
東北や北関東に工場を持っている企業は深刻な被害を受けており、デューディリジェンス(企業精査)をやり直す必要があります。装置が破損していれば当然減価もしくはゼロ評価になります。店舗が津波で流されるもしくは深刻な被害を受けているならば、評価はゼロになります。いや、むしろ販売拠点を一括で買収する流通業界のM&Aでしたら、販売拠点はなくなり、地域に住む消費者の購買行動も変わるわけですから、評価は抜本的に見直され、このM&Aは進める意味がないという結論になるものも出てくるでしょう。
このような事を勘案しますと、2011年のM&A市場は2010年よりも縮小し、特に大型のM&Aに影響すると思います。最後にレコフデータ社が発表した2011年1月から2月の国内企業同士のM&Aは、対前年比で約11%のマイナスでした。震災前の状態で対前年比マイナスの上に今回の震災の影響を考えますと、M&Aアドバイザリー業は辛いですね。
- [2011/03/18 11:58]
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