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最近のM&Aを見て感じること 

この1か月の新聞発表を見ても、キヤノンがアクシスを3337億円で買収、近鉄エクスプレスがAPLロジスティクスを1400億円で買収、日本郵政がトールを6000億円で買収という報道がされており、この3件の買収金額を合計するだけでも1兆737億円になります。2014年の日本企業による海外企業の買収金額が5兆7741億円だったと記憶していますので、実に、この3件で昨年の金額の18.6%を達成してしまったことになります(為替相場の影響は除く)。

海外企業の買収を加速する原因は、少子高齢化で市場の縮小が続く国内市場よりも人口増が見込めるアメリカ、東南アジアといった成長する市場で事業拡大する戦略によるものでしょう。買収先でも、法体系が整備されている欧米や国によっては法整備がまだまだですが、大きなリターンを見込める東南アジアへの関心が高く、逆に、反日感情が強い国への関心が低いのも、昨年の数字から読み取れる現象です。

しかし、1990年の松下電器産業(現パナソニック)による米映画・娯楽大手MCA社買収(1995年に加シーグラムへ売却)、1989年の山之内製薬(現アステラス製薬)による米健康食品大手シャクリー買収(2004年にファンドのリップルウッドに売却)、1989年の藤沢薬品による米後発医薬品のライフォメッド買収(1998年に事業精算)などの事例を見るまでもなく、失敗例が多いのも実情です。これらのM&Aはバブル経済の時期に行われていますが、あと25年もすれば、最近の海外企業に対するM&Aが成功だったのか失敗だったのか結果が出ているでしょう。

資金さえあれば、誰でも企業買収を行うことができますが、買収後の経営が出来て企業価値を上げなければ、意味がありません。自社のコア事業に関連した企業を買収し、経営の主導権を取り、買収した国の実情を見ながら経営ノウハウを導入してオペレーションを効率化する。また、買収した国の実情を見ながら買収した企業の事業領域を広げる。そして、自社よりも大きな企業を買収するという社運を賭けた冒険をしないことを心掛けることが失敗を避ける要諦だと考えます。

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