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仲介(双方代理)行為では解決できない契約上の重要論点 

M&A取引契約の中で重要な論点が「表明保証」です。この項目が入らないM&A契約書は、例えるなら、M&A取引金額が書かれていない契約書と同じで、25年のM&A業務歴でお目にかかったことがありません。

この表明保証とは、M&A取引で、被買収会社にデュー・ディリジェンスで発見できなかった瑕疵があった場合、買い手はそれによって被った損害を売り手に対して賠償・補償請求することができる、という仕組みのことです。

言い換えますと、デュー・ディリジェンスで簿外債務が発見できなかったとしても、この保証表明事項が契約書に規定されていれば、買い手は出てきた簿外債務より被った損害を売り手に対して賠償・補償請求することができます。

本題に入りますが、M&A契約交渉では、売り手としてはなるべく表明保証を限定したいですし、表明保証違反があった場合に買い手から賠償・補償請求されうる上限額もなるべく少なく抑えたいと考えます。

逆に、買い手は、できるだけ広範な表明保証を要求し、かつ表明保証違反があった場合に売り手から賠償・補償請求されうる上限額もなるべく多くしたいと考えます。

M&Aの条件交渉では、この表明保証交渉にかなりの時間と労力を費やします。なぜなら、ある会社を10億円で買収した後に、50億円の簿外負債が出てきたら、買い手側は都合60億円を負担することになるので、真剣になります。

さて、この交渉を売り手と買い手の間に立ち、両側から手数料を取る仲介業者が、この利害の対立する論点について真剣に交渉を行うと思われますでしょうか?答えは敢えて書きませんが、誰でも容易に想像できることです。

私どもは仲介を行わず、売り手側か買い手側のどちらかにだけついて助言しますので、私どもが買い手側に立てば、表明保証条項は厳しくなる方向で買い手側に助言しますし、私どもが売り手側に立てば、表明保証条項を緩くする方向で、売り手側に助言します。中立を謳う仲介会社には絶対に真似のできないことです。後ろめたさも全くありません。

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