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鴻海によるシャープ買収。B種種類株式取得次第では、キャッシュ・アウトが起きる可能性について 

鴻海精密工業(以下、「鴻海」)によるシャープ(以下、「シャープ」)買収について、議決権割合の観点からキャッシュ・アウトの可能性について述べます。

本稿執筆時におけるシャープの発行済株式総数は、1,701,214,887株であり、その議決権個数は1,701,214個です。

シャープの株主総会で鴻海(割当先4社をまとめて鴻海と書きます)への第三者割当増資(特別決議事項)が可決成立したとします。鴻海は、シャープの普通株式3,281,950,697株を引受けますので、3,281,950個の議決権を持ちます。

更に、鴻海は既に発行済であるA種種類株式の半数とB種種類株式の全部を既存株主から取得します。B種種類株式の株主はファンドですので、2月25日の適時開示通り、鴻海に種類株式を売却し利益を確定させるものと思われます。

鴻海が取得するB種種類株式25,000株は、平成27年7月1日以降、普通株式178,052,777株と交換できます。

鴻海はB種種類株式を普通株式に交換することにより、178,053個の議決権個数を持つので、合計で3,460,003個の議決権個数となり、議決権個数割合は67.04%(議決権個数の三分の二以上)になります。

この結果、鴻海はシャープの株主総会で特別決議を可決成立することができ、全部取得条項付種類株式を用いたキャッシュ・アウトを実行することができます。

具体的な説明をします。

鴻海は既に種類株式発行会社となっているシャープの株主総会で定款変更を行い、発行済みの普通株式に全部取得条項を付す旨の定款変更を行います。

その上で、シャープは、株主総会決議により、全部取得条項の付された普通株式の全部を取得し、その対価として別の種類の株式を交付します。

この際、鴻海以外のすべての株主にその別の種類の株式の1株未満の端数が割り当てられ、かつ、鴻海には1株以上の株式が割り当てられるように割当比率が調整されます。

鴻海以外の全株主が割当を受ける株式は端数であるため、これらはまとめて売却され、その代金(現金)が鴻海以外の株主に交付されます。

鴻海以外の株主は、端数処理を通じて現金により閉め出され、シャープの株主ではなくなり、シャープは鴻海の100%子会社になるという仕組です。

鴻海以外の株主で取得に反対する株主には、裁判所に対する価格決定申立権(会社法第172条)の救済措置が設けられていますが、原則として、100%子会社化という行為を止めることはできません。

なお、端数株式を利用した少数株主の排除は、株式併合という手法を用いることでも可能です。少数株主が併合後に取得することとなる株式が端数となるように併合比率を調整するのです。

この場合も、反対株主には端数株式の買取請求(会社法第182条の4)、裁判所に対する価格決定申立権(会社法第182条の5)が付与されていますが、原則として、100%子会社化という行為を止めることはできないことは同様です。

本件の論点のひとつが、我が国から海外への技術流出です。

仮に、シャープが鴻海の100%子会社になれば、“経営の独立性”(当社及びその子会社の経営の独立性を維持・尊重すること)はまずあり得ないと思いますし、“シャープの技術の保持”(当社の日本における研究開発、製造機能を維持し、当社のコア技術の流失を防止するために相互に協力していくこと)についても、技術流出の実態は内部にいる人間しか判らなくなるでしょう。

つまり、キャッシュ・アウトが起きると、技術流出防止のチェックができなくなるという懸念が生じます。

加えて、シャープの100%子会社化は金銭面でもメリットがあります。例えば、配当金が100億円あると仮定します。現在の株主構成ですと、鴻海が67億円を受取り、鴻海以外の全株主が33億円を受け取ります。ところが100%子会社化すると、100億円の配当は全て鴻海が受け取ることができます。

この買収は、シャープの株主総会で特別決議を経て成立します。シャープの株主は、キャッシュ・アウトにより追い出される可能性も勘案し本件への賛否を決めるべきです。

さて、技術流出を始めとする問題に明確な答えが出ない一因が、“日本版エクソン-フロリオ条項の不在”です。米国のエクソン-フロリオ条項とは、米国の安全保障を脅かす外国企業による米国企業の買収を差し止めることを目的とした条項で、包括通商法に規定されています。エクソン-フロリオ条項に基き、航空、通信、海運、発電、銀行、保険、不動産、地下資源、国防の9つの産業分野で国家安全保障上懸念のある国内資本の買収案件を審査する省庁横断から構成される外国投資委員会(CFIUS)を政権内に持ち、大統領の判断で、案件を拒否することもできます。

本件に代表される海外企業による日本企業買収が現実に起きる状況を迎え、国益の観点から“日本版エクソン-フロリオ条項”と“日本版外国投資委員会”の導入時期に来ています。

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