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【外資規制】放送会社の外国人持ち株規制問題について 

このコラムでも、毎月株式を上場している各放送会社の外国人保有比率について、取り上げて来ましたが、ガジェット通信が総務省に質問をしたようです。これについては、すでに報じられているので、詳しくは触れませんが、いくつかのポイントについてコメントしたいと思います。ガジェット通信さんのサイトから一部を転載します。

(ガジェット通信から転載)質問「テレビ局の外国人株式保有率について」

テレビ局の外国人直接株式保有率が、フジテレビに関しては29.59%であり、日本テレビは22.66%です。これは電波法第5条に定める外国人株主の比率、20%を大きく上回り、法的に問題がある状態です。またこの状態が2013年まで続くとこれらの放送局は免許取り消しとなります。この法的に問題のある状態について貴省ではどう考え、どういう取り組みをおこなっておられますか。

(総務省による)質問への回答

 電波法(第5条第4項)及び放送法(第159条第2項)においては、外国人等の議決権の割合が5分の1以上である場合が欠格事由(免許・認定の取消し事由)として規定されています(いわゆる「外資規制」)。

 この電波法及び放送法上の外資規制は、ご指摘の株式の保有比率ではなく、議決権の割合で規定されています。名義書換拒否が可能であるため、議決権の割合は、ご指摘の株式の保有比率とは必ずしも一致するものではありません。(中略)

 (株)フジテレビジョン((株)フジ・メディア・ホールディングス)及び日本テレビ放送網(株)につきましては、直近の株主確定日(議決権の確定日)における外国人等の議決権の割合は5分の1に満たない旨の届出を受理しており、放送法及び電波法上の欠格事由には該当していない(外資規制に違反していない)と認められます。(以上、ガジェット通信からの転載終了)

整理しますと、フジ・メディア・ホールディングスの場合、その外国人による持株比率は29.59%であり、日本テレビ放送網の外国人持株比率は22.66%であることは事実です。

ところが、電波法及び放送法に基づき、フジ・メディア・ホールディングス及び日本テレビ放送網は、株式を保有する外国人に対し、名義変更の書き換えを拒否することが可能です。このため、フジ・メディア・ホールディングスの場合、29.59%の株主のうち、9.6%の外国人株主に対して、株式の名義を(以前保有していた人)から外国人に書き換えることを拒否し、総務省に19.99%が外国人株主であると届け出ています。この名義書き換え拒否で、放送法及び電波法上の欠格事由には該当しないことになります。

しかし、フジ・メディア・ホールディングスの事例では、外国人株主比率が29.59%であることには何らの変りもありません。

以上をまとめますと、

フジ・メディア・ホールディングスの場合は、
外国人株主が占める保有比率は29.59%
このうち、同社から名義書き換えを拒否された外国人株主が 9.6%
名義書き換えを拒否した結果、同社が総務省に届け出た外国人株主が占める保有比率は19.99%

となります。

小生は、電波法、放送法に基づき、一部の外国人株主に対し、名義書き換えを拒否し総務省に19.99%と届けることで、電波法、放送法に違反していないということを論点としているのではなく、フジ・メディア・ホールディングスの場合、外国人株主が占める保有比率は29.59%であるという事実とこの事実が放送内容に及ぼす影響がないのかという点を重視しています。

これについても、ガジェット通信が、総務省に質問しておりますので、引用致します。

(ガジェット通信から転載)質問「テレビによってつくり出される流行について」

テレビ局が「ブームを捏造している」という問題提起もおこなわれております。まだ流行とはいえない現象をことさら大げさに「流行している」ように放送番組で扱い、ブームを作り出しているのではないかという指摘ですが、この件に関して貴省の見解をお知らせください。このようなブームの捏造はおこなわれていると考えておられますか。またそれに近い行為もまったくないという認識でおられますか。

(総務省)質問への回答
 放送事業者の自主自律を保障する観点から、放送法(第3条)において、放送事業者には放送番組編集の自由が保障されており、原則として行政権が放送番組の内容には関与することはできないとされています。したがって、放送番組の内容に関しては、コメントを控えさせていただきます。(ガジェット通信からの転載終了)

ある意味で当然の回答ですが、総務省が監督しているのは、外国人への名義書き換え拒否後の、外国人持ち株比率が20%を超えているかどうかという点です。フジ・メディア・ホールディングスも日本テレビ放送網も一部の外国人株主に対して、名義書き換えを拒否することで、総務省へ提出する書類には「当社の外国人株主による持株比率は19.99%でございます。」と報告している以上、総務省の立場からは「(電波法、放送法の外資規制には)問題なし」との回答になります。この点は、ガジェット通信の見解(下記)と同じです。念のため、元々外国籍で我が国に帰化した方が保有する株式は、我が国の方が保有する株式の方にカウントされます。

(ガジェット通信の見解:同社サイトから転載)ざっくり要約すれば「放送局に問題なし」という回答です。総務省は管轄官庁ですから、放送局に問題があれば立場上看過できません。つまり総務省から見て放送局は常に「問題のない状態にある」というのが当然であって、いろいろ質問をおこなってもその回答は当然ながら「問題はない」ということになってしまいます。しかし総務省の考え方等を再確認するという点では意味があると考え、いただいた回答をそのまま掲載させていただきました。(転載終わり)

ガジェット通信さんのサイト(リンク修正しました) http://getnews.jp/archives/139658

では、なぜこの外国人持株比率問題に興味を持ち、取り上げたかについて説明することにします。

下記は直近(2011年9月16日)の外資規制対象会社の状況です。資料:テレビ局株式の外国人直接保有比率

201109161.jpg


この資料からわかります様に、今回の外資規制に関する議論で、注目している点があります。

それは、特定の放送会社の外国人持ち株比率が高く、放送業界全体の外国人持ち株比率が高いのではないということです

TBSと比較すると、フジテレビ(フジ・メディア・ホールディングス)の外国人持ち株比率は約4倍です。

日本テレビ(読売系)、フジテレビ(産経系)といった保守系メディアの外国人持ち株比率が高い一方で、TBSやテレビ朝日(朝日系)といった革新系メディアの外国人持ち株比率は低いことが判ります。これは、どの様なインプリケーションを示しているのでしょうか

そもそも外国人持ち株比率への規制(外資規制)が行われる理由は、「放送が影響力の大きいメディアであることをかんがみ、基幹放送事業者、認定放送持株会社並びに基幹放送局提供事業者への外資規制が設けられている。」とされています。つまり、放送が社会的に与える影響が大きいので、規制がかけられています。

一部の外国人株主に対し名義書き換えを拒否することで持ち株比率を調整し、総務省へ届けることも免許の維持のためには必要な処置でしょうが、実際に約3割もの株式を外国人が保有することで、そもそもの外資規制の理由である(外国による)放送を使った社会的影響防止ということがどうなってしまうのか

これは客観的に計ることが難しい問題で、保守系メディアの株式を買い、大株主となった外国人が、株主の意向に沿った放送を流しているのではないかという見方もある一方で、放送局は外国人比率が高い低いに関係なく、我が国の国益に資する放送を企画・放映しているという見方もあるでしょう。

小生は、上記にある外資規制導入の趣旨を考えると、外国人持株比率が高いことは、好ましい状況ではないと考えます。

ちなみに、全外資規制業種企業の一覧を載せますが、これを見ると、外資規制を超えた外国人持ち株比率になっているのは、フジ・メディア・ホールディングスと日本テレビ放送網の2社だけとなっていることが判ります。

kisei.jpg


米国ではエクソン・フロリオ条項により、外国企業による米国企業買収について「国家の安全保障を脅かす」と政府が判断されれば、どのような業種でも外国資本の買収を止めさせることができます。韓国も韓国版エクソンフロリオを導入済みです。

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